離婚届を目の前に出され躊躇

椅子へ腰下ろす、眼前にあるテーブルの上、紙切れが一枚。恐ろしくパワーを持つ重要書類。

そう、離婚届。これで長年連れ添った相棒と、袂を別つ羽目に陥り、笑えん話極まりない。

断じて判を押す気も、名前を書くつもりさえ無いが、傍らには無言で鋭い眼光を放つ女性が一人。あぁ、引き延ばす事や逃走さえ出来んだろう。

「待ってくれ、もう一度二人でやりなおす時間は?後生だ」と言えば、即座に罵声が来る事間違い無し。離婚届……ずっと一緒にやっていく筈だったけど、何故?

「早くして頂戴よ。私、暇じゃありません」そう急かす。ふざけるな、離婚届だぞ?終わりというのに…女は深く溜息をもらす。

「何が離婚届よ。ガラクタ処分で終了。それだけじゃん」。

最早我慢出来ず、スクッと立ち、「ガラクタとは何だ!あれは我が愛妻だ!処分等とふざけた口をきくんじゃあない!」と強く言い放つ。

「何がよ!正妻は誰?あたしでしょ?放ってお人形遊びじぇ夢中になっちゃってさ。早くリサイクルショップの買取り申込書にサイン書け!」。戸籍上は妻な女が怒鳴り散らす。